感染予防と日本の歯科

  感染予防と日本の歯科

お役立ちコラムCOLUMN

2017.07.14

感染予防と日本の歯科

感染対策に関する日本の歯科のスタンスは常に問題にされます。

つい先日も、「グローブを常に交換しているか?」とか、「歯を削る道具を滅菌しているか?」といった問題がテレビでも放映されていました。

いまだに半数以上の歯科医は十分の処置が出来ていないという結論でしたが、日本の歯科に内在する問題がそこに集約されています。

何故そのようなことが起こっているのかを私なりに考えてみると以下のようなことが理由であると考えられます。

1、そもそも、感染対策を行うだけのコストを保険診療の報酬では難しい(再診料が450円)。
2、個人経営がほとんどの歯科医院であり、歯科助手などの感染対策の十分な教育を行うだけの余裕がない。
3、大学教育で感染対策をきちんと教育していない。

等があります。当医院では感染予防費という費用を再診料と同じ感覚としての位置づけで頂いていますが、保険診療ではそこにはコストという問題がどうしても出てきます。短時間で大量の患者さんを診療してゆかねばなりません。なぜなら歯科での保険診療は一回の診療あたり500点(5,000円)以上の請求をすると健保から目をつけられ、個別指導などの嫌がらせに近い仕打ちを受けるからです。

そのためできるだけ一回の診療報酬を減らしながら多くの患者さんを診療するスタイルにならざるを得ず、こちらは「治療のテクニック」というより「健康保険対策を考えた診療の仕方」、といった方法にならざるを得ないからです。

そして、一回あたりの時間が限られるために、十分な感染対策をする時間的な余裕もありませんし、大量の器具も必要となります、クラスBといったハイレベルの滅菌器では滅菌できる器具の数に限界がありますから、アメリカなどで標準の感染対策を行うことは通常相当難しいといわざるを得ません。

保険診療ではユニット周りを毎回消毒することも時間の関係から難しいでしょうから、実際は世界標準の感染対策を行うこと自体が難しいといえるでしょう。混合診療に関してはいろいろいわれていますが、ある程度の感染予防をするためには、対策費を実費で頂くなどいずれ取り入れなければならないと思いますし、歯科医側の問題とばかりもいえないのが現実だと思います。

日本の歯科用ユニットについても、世界のスタンダードのユニットとは違うようです。
歯科大学で多くの学生が実習で歯科用ユニットを使いますが、それを開業しても好んで選ぶことになるので、各メーカーは大学に歯科用ユニットを納入することに躍起になります。そして日本ではほとんどの場合国産のユニットが選ばれますが、そのほとんどが感染予防についての考慮がされておらず、世界的の標準的な感染予防を行うことが出来ません。

そのユニットを使って大学を卒業した先生に感染予防をきちんとして欲しいと思っても難しいことは明らかです。(スピットンは今は使わないのが一般的ですし、水も通常水道水は使いません、ユニット内のチューブを洗浄できる水を使います)

世界的に見るとアメリカのa-dec社の歯科用ユニットが感染予防など様々な点で優れている歯科用ユニットの世界標準なのですが、日本の大学病院でほとんど見たことがありません。

10年ほど前に私の医院で器材の準備などを手伝いに来ていた学生が、大学の病院で実習が始まると、あまりの汚さに、アルコール綿をもって感染源となる部分を拭きまわっていたら、「一体何をしているの?」と怪訝そうにみんなに聞かれたといっていました。それほど大学病院の感染対策は遅れていたようです。(今はだいぶ変わったと思いますが)

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