歯科技工と診療

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お役立ちコラムCOLUMN

2018.06.27

歯科技工と診療

歯科治療は、詰め物やかぶせ物、そして、矯正ではブラケットを装着するための装置や、診断用の模型マウント、リテーナーの製作、など、多種多様な技工操作が存在します。
そして、それを歯科医が自ら行うことで、自分の治療技術の験算になります。
私が、入れ歯やかぶせ物を正確に作成したつもりなのに、口の中で全くうまく適合しなかったり、噛みあわせが異常に狂っていたりする原因について理解できたのは、自ら技工操作をしたおかげです。
多くの歯科医は、自分が型取りをしたものが口の中にうまく入らないと、技工士さんのせいにします。私も実は絶対にエラーが起きないよう随分工夫して型を取ったり、かみ合わせの記録と正確に取ったりしていたので、よく技工士さんの技術を疑ったりしていましたが、実際はどんなに正確に型取りをして、噛みあわせを採得したとしても、口の中で合わないことがあります。このときはきっぱり諦めてすぐに再製作に移ります。
私は再治療や、型の取り直しをすることが効率を下げ、集中力を下げるのでとても嫌で、自分で技工操作をして治療や技工の作業工程における原因を探したり、型材やかみ合わせ材を十分に選定し絞り込んだりもしましたが、それでもエラーが起こることがるとわかったのです。どこに原因があるかはすべてを自分で検証しないとわかりません。ほとんどの先生は十分な検証をすることなく、「あの辺りの作業がエラーの原因かもしれない」で終わってしまいます。でもそれでは人間の身体に一体何が起こっているかを知ることができません。
このような経験から、人間の身体や顎関節は非常に柔軟性があるため、たとえすべての操作が適切であって、材料も最高のものを用いられたとしても、個人個人の条件次第で、かみ合わせの位置が一晩で変わってしまうことも不思議なことではないと気がつくことが出来ました。つまり、技工や材料が原因で狂ってしまうわけではないと発見したわけです。
これは非常に重要な発見で、そこに行きつけないため、個々の患者さんの反応性や、それにあった治療法を工夫する先生が余りに少なすぎます。私がブリッジや入れ歯、そして矯正治療のかみ合わせに関して、患者さんの個々の挙動に対し動揺することなく自信をもって治療に当たれる理由は、自分で技工操作を行ってきた経験から人間の身体の柔軟性と、反応性を十分に熟知しているからといって他なりません。
顎周りのみならず、体全体のバランスが狂えば、かみ合わせに影響がでることは実は結構起こっていることです。そして治療技術が高ければ高いほど、患者さんが治るときに身体の反応が起こり、顎周りや身体のバランスが良い方向に変化し、その変化に対応した治療が必要なのです。つまり、矯正治療などでは、昨日まで正しかったかみ合わせの位置が今日には変わってきて、1週間も待つと耐えられないほどの狂いになってしまうこともあるのです。
本当に体まで良くなる歯科治療は、このようなバランスを悪い状態から良い状態へと導くことができなければなりません。治療中一体何が起こったかを理解できずに動揺しているようでは治療にならないのです。

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