かぶせものと顎関節症

  かぶせものと顎関節症

お役立ちコラムCOLUMN

2019.11.20

かぶせものと顎関節症

かぶせものと顎関節症

かぶせものが狂うと顎関節症に?

「ブリッジや、かぶせものを入れられてから、顎の調子が悪くなったことはないでしょうか?」

実は歯は非常にデリケートな組織で、ほんのわずか数十ミクロン(一ミクロンは1000分の一ミリ)の高さの違いで、顎全体のかみ合わせの位置が変わってしまうことがあり、最終的に顎の周りの筋肉に異常な緊張を生んでしまいます。
被せものや、詰め物を入れてもらったら、かみ合わせは違和感がなくなるまできちんと調整してもらわないといけません。

しかしながら、この違和感が曲者で、奥歯のブリッジや最後臼歯(7番)の調整の場合、仮歯などを入れない状態で翌週にかぶせものを入れようとすると、ものすごく高く感じることがあります。特に一番奥の歯を含むブリッジで仮歯がきちんと作られなかった場合、ブリッジを入れる際、非常に高く感じて、ブリッジをかなり削って調整されなければ違和感が消えない場合があります。

これは仮歯の高さが正確でなかったり、仮歯を作らなかったため顎の筋肉が徐々に縮み、誤った本来の高さより低い状態に顎の高さが慣れてしまったため、正しい高さのものを入れられると逆に高いと感じてしまうのです。

このような場合はブリッジを入れられてからしばらくすると、顎の違和感だけでなく、全身にわたる症状(頭痛や、肩こり、全身の倦怠感や、腰や足の痛みまで)が起きることがあります。(顎関節症でおきる症状参照)

ところで、かみ合わせがくるってしまっても、まったくなんの問題も出ない人と、大きな問題が出てしまう人とがいます。これは患者さんの感受性が違うことによって起きています。
また、人によっては顎に緊張がかかってしまう時期とブリッジの型を取った時期が重なってしまったりすることもあるでしょうし、ブリッジを削られること自体が顎の筋肉にとってストレスになることもあります。

患者さんの感受性が高く、デリケートな人は僅かなかみ合わせのズレのやかみ合わせの面の狂いなどが、顎全体の筋肉に緊張を生み、その緊張が全身に広がります。

その感受性は人それぞれで違っており、周りのほとんどの人が問題がないレベルても、本人にとっては非常に重要な問題であることが多いのです。

ちょうど、同じ映画を見ても感動、衝撃の感じ方が違うように、また、同じ体験をしても心理的ストレス障害(PTDS)になる人がいるように、人によって受けた歯の治療によるダメージは全く異なるのです。人によっては一生を左右するほど深刻な問題になりうるものなのです。

実際に私が歯の治療で不具合を訴える患者さんを治療している経験から判断すると、人生そのものまで変えられてしまった人が1人や2人ではありません。今までで何十人もの方が実際に苦しんでいらっしゃいました。本人が気がついていないだけで、日本中には、生まれつきの歯の不具合と治療による不具合を合わせると数えきれないほどの、歯と噛み合わせに問題を抱え、健康や人生の質まで落としている人がいると考えられる訳です。

また、このような敏感な人は、歯だけの問題ではなく、体の反応も非常に敏感で、感性も鋭く、反応性が高いため、人によっては薬づけになってしまったり、あまり好ましくない悪習慣(ギャンブル、喫煙、飲酒癖、過食)を止めることができなくなったりするのです。そういった意味で総合的な治療(こちらのページ参照)が必要な方といえるのです。

かぶせものでかみ合わせが狂うとどうなるの?
かぶせもので本来の正しいかみ合わせとは異なる被せものや詰め物をされてしまうと、かぶせものが高い場合は、顎はできるだけ高いかぶせものに歯が強く当たらないように顎をずらしますし、逆に低い場合も、その歯も当たって噛めるように、顎をずらし、3次元的な顎の位置が変化してしまいます。

そのためもともと治療に当たり、正確な詰め物を充填や補綴を行える技術がなければ正常であったかみ合わせが、治療をされる度にどんどん狂わされてしまい、顎が体のバランスのとれていたもともとの噛み合わせの位置から離れて行ってしまうのです。

すると、顎の位置に狂いが、顎周囲の筋肉のみならずからだ全体をアンバランスにさせてしまいます。

頭部分のバランスの狂いはそれを補償するために全身のバランスにまで影響を与えててしまし、様々な不定愁訴が現れる顎関節症の原因となるのです。

またもともとかみ合わせがくるっている人は、今までは狂っているなりに、何とか体の状態を維持していたものが、完全に許容範囲を超えてしまうために、おかしくなってしまいます。実際に許容範囲を超えてしまうと、とても辛くて、我慢できるものではありません。

どんな症状の患者さまが治ってゆかれるのでしょうか?

1、私がはじめて顎関節症(かみ合わせの問題)で悩む患者さまを治療したのは、入れ歯の患者さま(ひどい自律神経失調症と糖尿病に悩まされていた)でした。(23年ほど前です)
この患者さまはかみ合わせの位置が正しい位置から5ミリ以上もずれており、つらい自律神経失調症で悩んで、仕事もできなくなっていました。
私が作成した入れ歯を入れる直前に、今まで使っていた入れ歯が使えなくて、かめないためにお酒ばかり飲んでいたために、一時危篤状態になってしまいました。
当時相当焦りましたが、なんとかきちんとかみ合わせのあった入れ歯を入れることができ、自律神経失調症や糖尿病の症状が消え、今は以前とは比べ物にならないくらい元気を取り戻しています。
この頃から、「もしかして歯とかみ合わせの治療では医療で治療が難しい慢性の疾患に効果があるのではないか」と思うようになったのです。

2、根の具合が悪いのと、そのあとのかぶせものの高さが悪く、頭痛やめまい、集中力減退を訴えていた患者さま。
根の治療を6ヶ月ほどかけて行い、かぶせものの高さを治し、ナイトガードとかみ合わせの調整でかみ合わせを治した結果、今は見違えるように元気になり、笑顔を取り戻しました。具合が悪い時は、勤務中でも集中力に欠け、お客さんとお話している時でも、そのお客さんに早く帰ってくれないかとと思うほど辛かったようです。そして、ひどいときは掃除をしているおばさんに近づくだけでも心臓の鼓動が激しくなるのを感じ、そもそもときめくはずが無い相手にどうしてこんなに心臓がどきどきするのか不思議だとおっしゃっていましたが、それも治ったようです。私なりに考えたその理由はこちら

3、一見かみ合わせに問題がないように見える患者さまでも、かみ合わせが狂っていることがあります。特に首、肩、背中に関連したように痛みがある患者さまは、ほぼ間違いなくかみ合わせに問題があります。
しかし多くの人は誰しも多少は肩や首は凝るものだと考えています。しかし実際、ナイトガードいれたり、矯正治療をを行うとほとんど全員が首や肩そして背中の痛みが和らいだといいます。これは、一見かみ合わせが良さそうに見える患者さまのかみ合わせがほぼ100%の確率でずれているからです。
私が考えるに矯正治療を行った後でも首の痛みなどが残っているようなケースは矯正が失敗しているといえるでしょう。本当に正しくかみ合わせの位置に矯正されれば、そのような不適切な緊張は取り除かれるはずだからです。

実際かみ合わせと首とは非常に深い関係があります。試しに顎の位置を動かしてみると、首の形は変化しますし、押したときの痛みの具合も変わります。

矯正治療を受けている際に、顎が滑るようになる場合があります。これは間違いなく、矯正治療によって、正しいかみ合わせの位置がわかるようになったために感じている症状です。
これを無視してかみ合わせを仕上げると、首の痛みがひどくなったり、集中力が落ちてきたりします。しかし実際はかみ合わせのせいとはふつう考えないので、そのまま矯正治療が終わってしまうのです。

どんな人が顎関節症になるのでしょうか?
顎関節症になる患者さまの傾向は似ています。

 

1、前歯の治療を大々的に行われた場合。(審美治療など)
歯の治療の中で、前歯の治療は非常に重要かつデリケートに行う必要があります。出っ歯だった歯を審美性を求めるために真っ直ぐ立てたことで、顎の位置が前歯に当たることで奥に入ってしまい、呼吸が苦しくなったり、自律神経にトラブルが起こることがあります。前歯の当たり具合はもちろん、その当たる角度も気をつけてかぶせ物を製作する必要があります。ちなみに前歯の角度はアンテリアルガイダンスと補綴学(かぶせ物や入れ歯で治療を行う学問)ではとても重要な要素として捕らえられています。不用意に審美を目的として前歯のかぶせ物を製作することはあまりお勧めできません。

2、奥歯のブリッジ、セラミック、審美性のレジン充填を行われた場合
奥歯のブリッジは非常慎重に行う必要があります。また、セラミックは、かみ合わせの調整が非常難しいうえ、かみ合わせの変化に対応できません。その点、比較的柔軟性のあるゴールドは、かみ合わせの変化にもある程度対応できます。セラミックのブリッジ等をかぶせられた後にかみ合わせに違和感があった場合、早急に処置をしないと顎のみならず全身にまで影響が出てしまいます。

レジンは面積の大きいかみ合わせの面に使用されると、磨耗しやすい性質から、特に最後臼歯(7番)などでは噛みあわせを変化させてしまう可能性が高いです。また吸水性があるので、充填後に違和感を訴える人も多くいらっしゃいます。樹脂は基本的に口の中に使って長期間もつ材料ではありません。

3、かみ合わせがもともと悪かったが出産、会社での配置転換などの環境の変化で発症
顎関節症はストレスと非常に密接に関係しています。何が発症の原因かを自分でも考えてみる必要があります。ストレスの発散がうまくいくようになれば、改善することも多いです。より良い自分の健康状態を求めるのであれば、かみ合わせの治療が必要です。それはその人の敏感さと、求めるものがどこにあるかで異なります。

4、もともとかみ合わせが悪かったが、加齢とともに発症。(女性は35歳前後、男性は40歳前後が多い)
かみ合わせが悪くても、人間はある程度調整できる能力があります。発症するのは体力が落ち始めたころです。 若い頃に耐えられたストレスも、年とともに耐えられなくなっています。多くの人がドリンク剤やお酒、薬などで乗り越えようとしますが、これはストレスエネルギーが身体に溜まっていることが原因ですから、歯の治療を含めたストレスエネルギーの除去が絶対に必要です。

5、奥歯(特に一番奥の歯)に長期間被せものを取った状態で、根の治療を行われたり、左右7番を同時に治療をされたあとに発症
前歯と同様、一番奥の歯はかみ合わせにとって最も重要な歯です。根の治療中も高さが変わらないように、かぶせ物を全部取るのではなく、真ん中をあけてアクセスして治療を行う必要があります。根の治療は期間がかかるので、根の治療で噛みあわせが低くなり、顎関節症を発症することも非常に多いのです

6、裏側から矯正された、もしくはマウスピース型の矯正装置で矯正された人、下の顎が小さいともしくは上の顎が大きいと診断され、上の歯のみ抜かれて矯正された人
特に下の顎が小さいもしくは上の顎が大きいと診断され、抜歯をされた患者さまは、睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化し、ひどい場合はふだんから突然眠気が襲ってくる、などの症状がおこることもあり、非常に恐ろしいものです。
これは顎の位置がもっと前であるにもかかわらず、歯を抜いて無理やり顎を後ろの位置できちんと噛み合うようにされるからです。顎の位置は奥歯の高さである程度決まるので、奥歯は低い人は上の歯が出っ歯と誤診されやすいです。
マウスピース矯正は奥歯の高さをコントロールすることはほとんど不可能です。裏側矯正は歯列を内側に絞り込む力がかかるので、広げたい骨をむしろ縮める力がかかってしまいます。

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