- 2018.04.12
- 矯正治療
矯正治療の規格化、インダイレクト法
実は矯正治療には長い歴史があり、その歴史の中で、どうやって効率的に矯正治療を行うか?そして、できるだけ正確な結果が得られるようにと、さまざまな工夫がなされてきました。
矯正治療のもっとも革新的な変化は「ストレートワイヤーテクニック」です。それまで、先生がひとりひとりの患者さんの歯列にあわせてワイヤーを歯ごとに曲げていた非常にテクニックの難しかった矯正治療をとてもやりやすくしたのです。
その方法ですが、簡単に言えば、理想的な歯の位置関係を徹底的に研究し、曲げない理想的なアーチの形状をしたワイヤーをブラケットに入れさえすれば歯列が理想的に並ぶ様にのブラケットの形状を規格化したのです。
これは非常に画期的な方法でしたが、実際にやってみると、今までとは比べ物にならないくらい、治療の精度が上がり、先生による治療の差が非常に少なくなりました。
しかし、実際には患者さんの歯の長さや、形状が画一的ではないことがありますし、何よりも正確な位置にブラケットを装着しなければ、歯が正確に並ばないという欠点もありました。したがって、ブラケットの規格としてはすばらしくても、それを使いこなすことが難しいという欠点がありました。
つまり、精度が格段に良くなっても、さらに改良の余地があったわけです。
矯正専門の大学院を卒業していないので、私の場合ブラケットを目分量で正確に着ける位置づけの訓練を受けていませんでした。ですから、白須賀法インダイレクトテクニックを習得するまではブラケット装着は大変苦労しました。
自分なりに当時の規格ややり方でインダイレクトテクニックを勉強はしてはいましたが、白須賀法のような正確なブラケット装着法が確立していませんでので、実際に歯を並べて咬ませてみて、咬まないとき、はじめて位置づけが悪いと気がつき、ブラケットを着け直していたので、治療期間も長引き、患者さんにもずいぶん迷惑をかけてしまうことになっていました。
実は今でも、ほとんどの矯正治療のブラケット装着はダイレクト法(ブラケットを目分量で直接歯に接着する方法)で行われています。しかし、ダイレクト法を実際にやってみるとわかりますが、狭い口に中で、ブラケットを正確に位置づけすることは非常に難しく、多くの矯正専門医はこの技術と、ワイヤーを曲げて調整するテクニックを何年もかかって習得しているともいえるのかも知れません。しかも、矯正専門医といえどもブラケットの着け直しを行うことが必要でした。
インダイレクト法がこれほど優れているのに、実際に行われているケースがそれほど多くない理由は、「自分でインダイレクト法を習得することが非常に時間がかかる」こと、そして、「忙しい診療の合間を縫って技工操作をしなければならない」こと、自分で技工を行わない場合インダイレクト法を技工操作をしてくれる技工所さんに頼むわけですが、「インダイレクト法の技工物を製作する作業に手間がかかりすぎて技工所も赤字覚悟の作業になってしまう」ため、普及しにくい状況となっているようです。
また、技工所に頼むと製作に5週間程度かかってしまうので、患者さんを待たせてしまったり、その間に歯が動いてしまうかもしれないという問題もあります。正確にしかも結果の良い治療をできるだけ短い期間で行えるインダイレクト法ですが、実際は普及率が高くないのもうなずける気がします。
私の場合、すべて自分で製作するので、早ければ3日ぐらいでも製作できますが、患者さんが毎日一日中詰まっているととても技工操作をする時間が取れませんし、無理をすれば自分の体調を壊しかねません。実はインダイレクト法の技工操作は非常に緻密でストレスのかかる作業なのです。ですから、診療時間の合間が十分にないと、自分で製作したインダイレクト法による正確な矯正治療を行うことができないのです。
そう考えると、顎関節症の患者さんのような、矯正治療の高い精度を要求される診療をきちんと行うためるには、テクニックだけでなく、診療所のさまざまな条件が整わなければ難しいのだとおもいます。
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