- 2016.04.06
- インプラント
人間の欲望とそれに答える治療
人間は欲望の生き物です。
歯がなくなると、入れ歯は厭でインプラントを打ちたい、歯が虫歯だと見えるのはいやだから白い歯にして欲しい、目立たない矯正治療や、見栄えだけ治したい。といったニーズは消えません。
子供の虫歯が激減して来ている今、歯医者さんも患者さんのニーズにこたえ顧客を獲得することは仕方が無い論理かもしれません。
しかし、私が20年以上も昔にアメリカの治療技術を教えてくれた先生は当時、「インプラントも、審美歯科治療も、歯科治療の本質とは異なるものである」といっていました。「特にインプラントは基本的に身体を不可逆的に傷つける治療であり、入れ歯やブリッジといった選択肢を押しのけてまで行うべき治療とは到底考えられない」とも言っていました。
私も賛成意見です。もちろん審美が回復して自信を取り戻す人もいるでしょうし、インプラントで噛める喜びを噛み締める人もいるかもしれませんが、基本的に第一選択の治療ではないといえるのではないでしょうか?
つまり「治療」することを第一選択とし、それをある程度満たした上でこのような治療があり、行われるべきであった、今のようなそれが積極的に薦められるべき治療のような風潮があるのは正直残念といわざるをえません。
私も20年以上「疾患を治すための歯科治療」が出来る歯科医を目指してきました。
本質とは違う歯科医療をされて「本当にひどい目に」あった患者さんもいれば、治療で起きている「本当にひどい目」に全く気がつかないで、自分の欲望のままに治療を受け続ける方もいらっしゃいます。
ただ、歯科医の良心として欲望のままに治療を受けようとする患者さんにはこう言うようにしています。「その先生があなたの歯の20年先を見越して治療しているのか良く考えて治療を受けてください」
インプラントを打つ先生は、患者さんの終末期にインプラントがどうなるかなど考えていません。
もし考えていたら、もう少しトラブルが避けられるような治療法を選ぶでしょう。
見栄えだけ治す先生が、患者さんが将来噛み合わせのトラブルで悩むかもしれないなど考えていません。
噛みあわせとは実は難しくて奥が深いと知っていれば、そのような安易な治療はしないからです。
自分の良くない欲望は結果的に、それに合った先生を選ばせ、結果的に自分に悪い結果が戻ってくるのです。
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