- 2018.06.02
- 矯正治療
ブラケットの位置づけ
矯正の治療中であるにもかかわらず、どうも「自分の矯正治療がうまくいっていないので見てほしい」といって相談される方が時々いらっしゃいます。
そして、ブラケットの位置を見てびっくり仰天することがしばしばあります。異常に歯の先端よりに装着されていることがあるからです。
現代の矯正用のブラケットはストレートワイヤー法といって非常に緻密に計算されています。
それは個々の歯(前歯から奥歯まで)についたブラケットに理想的なアーチの形状をした真っ直ぐなワイヤーを入れるだけで、歯列が理想的に並ぶように非常に緻密に作られています。
歯の傾きや歯面からの出具合、アンギュレーションといって正面から見た傾き具合も一部共通のものもありますが、歯の部位によって、すべて角度を変えて作られているのです。
この角度は歯科医の好みによってある程度選べるようになっていますが、先生自身の経験でもっとも使いやすい角度のものを組み合わせて使っているのです。
私の場合は奥歯に関してはアジア人向けに考えられたオーソスというものを臼歯では使っており、前歯から小臼歯まではデーモンブラケットの標準の角度のものを使っています。
そして、その角度は、ブラケットを見えている歯の高さの半分あたりにつけることで計算された歯並びになるよう設計されています。
ですから、ブラケットの高さを極端に高い位置や低い位置につけてしまうと、計算されて作られた意味がほとんどなくなります。一見何の相関関係も無いように思われるでしょうが、実際はすべての調和の元にブラケットの角度が決まっているため、一本のブラケットがわずか400ミクロン高さが狂うだけで歯列の調和がまったく取れなくなってしまいます。
それほどブラケットの位置づけは大切なものなのです。
以前講習会で見せていただいた症例では、すべてのブラケットを上下逆さまにつけてしまい、何年経っても歯が噛んでこないという間違いを犯していた歯科医もいたようです。
ブラケットは上と下とでは与えられる角度がまったく違うので、間違って装着されると噛まなくなるのは当たり前のことでしょう。そんなミスもありますから、ブラケットの管理はきちんと行われていなければなりません。ブラケットを見ただけではどれが上でどれが下かはまったく見分けがつきませんが、与えられている角度が違うので歯の並びがまったく変わってしまうのです。
矯正治療はそれほど緻密な治療なのです。それゆえ多くの矯正専門でない先生が矯正治療を始めようとするのを躊躇し、テクニックの比較的容易なマウスピース矯正などに手を出すのだと思います。
しかし、マウスピース矯正だけではどうしても治療が完成しない場合があるので、それをフォローするためにブラケットが扱えないと非常に困った事態が起こります。
一体最後にブラケットで仕上げるなければならないリスクのあるマウスピース矯正を行う必要があるでしょうか?それが私の考えです。
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